およそ2年前、小本チームは一件の特別な古民家保存プロジェクトを引き受けました。準備、修繕、整備の年月を経て、ついに今年の春、その努力が実を結びました。私たちの古家民宿、「曲巷冬晴 Sukina B&B No.1」が完成したのです。鹿港の九曲巷内の金盛巷52号にあるこの漢式古家は、20年以上荒れたままになっていました。空間計画の最適化を考慮し、六角タイル、木製の丸梁、赤煉瓦の壁など、古家本来の特徴を保存しました。老朽化して使用できない部分を修復し、新しい構造を支える鉄骨を設置して光を取り込み、路地にある古家の採光不足という欠点を改善しました。古家を愛する旅人に、快適で趣のある宿泊体験を提供します。
古家の活性化における課題
「先祖から受け継いだ古家を、どうしたら適切に活用できるでしょうか」遠方に住む現在の家主から漏れ聞こえる疑問と不安、修復した古家の将来的な再利用方法を知ることも評価することもできないという困難な状況。
自分たちだけでは、この古家の未来をすべて見通して計画することは難しい、そう感じていました。せっかく修復した空間を他人に任せれば、きちんと大切に扱われ、建物の文化的価値を活かしてもらえるのかという不安も残ります。整理しても落ち着かず、整理しなくても前へ進めない。そんな板挟みのような葛藤が、幾重にも重なっていったのです。

計画と統合、転身と再生

言い換えれば、家主は家族の古家を保存したいという思いはあるものの、「修復」と「再利用」を同時に満たせる良い解決策が見出せていませんでした。家主が解決策を模索する過程で、私たち雄本老屋の部門横断チームの専門的な「統合」能力が力になり、家主にこの核心的な問題の解決方向を提供しました。
古家の健康診断や文史調査、建築空間の修繕・インテリアデザインの専門分野にとどまらず、計画立案から行政による支援・補助制度の活用までを総合的に評価・設計。ハード面での修復や設計だけでなく、ソフト面での再活用・運営計画の策定と実行にも力を注いでいます。そうして再生された古家は、単に空間が新しくなるだけでなく、時代とつながり、持続可能な未来へと向かう生きた場として息づいているのです。
古家を愛する旅人のために、金盛巷52号「曲巷冬晴」がくつろぎと安らぎの場所を提供できることを願っています。曲がりくねった九曲巷は、鹿港の9月の季節風を遮り、冬でも春のように暖かく静かです。ガジュマルの木陰で涼みながら、見上げれば青空と緑の葉が揺れている。裏庭ではお茶を淹れたり湯に浸かったり、冬には焚き火を囲んで小さな酒を温める。
地域の古家の「転身と再生」は容易ではありませんが、私たちと家主が話し合って実践した総合的な解決策が、より多くの人々に心からの微笑みをもたらすことを願っています。私たちがいつも語っていること。「家は人がいてこそ輝きます」鹿港の「曲巷冬晴」は、皆様のご来訪をお待ちしております。共に生まれ変わった古家へ足を踏み入れましょう。