Copyright © 2025 X-Basic PLANNING Ltd.

WORKS

WORKS

長源医院-私有歴史建築保存再生プロジェクト

記憶を担う古家と古いものたち

「物が長い間隅に積み重ねられて忘れ去られると、本来の価値も徐々に消え、最終的には空間を占める廃棄物になってしまう」家具を一つ一つ分類し、過去を振り返る中で、長源医院の4代目家主である許正園医師は古いものが捨てられることへの惜しさを感じたままに吐露し、この歴史建築とその中の思い出をまだ気にかける人がいることに感謝しました。

長源医院の修復工事が始まる前、雄本老屋は家主の協力のもと、屋内に残された文物を丁寧に梱包・保管し、時の流れの中から失われかけていた記憶を掬い上げました。修繕の過程では、かつて朽ちていたもの、埋もれていたもの、さらにはすでに取り壊されていた構造までもが、歴史資料や古写真の検証によって次々と本来の姿を現していきました。こうして古家と古い品々は長い眠りから目覚め、埃を払い、再び人々が行き交う街角へと戻ってきました。斜め向かいに建つ歴史建築・玉珍斎とともに、鹿港の象徴的な交差点の風景を織りなしています。

2020年、長源医院の文物収蔵倉庫には、古い建物から運び出された家具や日用品が並べられていました。記録と整理の過程で、許正園医師は父親が残した多くの古い写真や資料を発見しました。さらに文化財調査を進めるなかで、幼い頃の記憶をたどりながら、小学生時代に身につけていた最初の腕時計を見つけ出しました。半世紀の時を越えても、ベルトの弾力はそのままに、止まった針はまるで時を封じ込めたかのように静かに佇んでいました。手首の上で凝り固まっていた時間がふたたび温もりを帯びるにつれ、許医師の表情もやわらぎ、子どもの頃にティトニの腕時計をつけたときのあの胸の高鳴りを、仲間たちと笑顔で語り合いました。

トタン屋根の下の新発見

ティトニの無傷の姿とは対照的に、これらの品々を守り続けてきた長源医院の建物は、長い歳月のあいだに深刻な漏水やシロアリ被害、そして壁面の膨張や剥離といった問題を抱えるようになっていました。やむを得ず、許家の祖母・施秀香さんは、工事業者に依頼して屋根を鉄板で覆い、雨漏りを防ぐことで、ひとまず建物維持の悩みをしのぐしかありませんでした。

天井からの雨漏りは防げたものの、鹿港の湿気はいたるところに入り込み、閩式(びんしき)街屋の木製丸梁の端部を腐らせ、そこにシロアリが巣を作って棲みつくようになっていました。修復チームは当初、30本の木梁を交換する計画を立てていましたが、実際に鉄板を取り外して構造の状態を確認したところ、損傷が予想以上に深刻で、最終的には交換本数を70本に増やさざるを得ませんでした。修繕後の煉瓦壁と木梁には十分な防水処理が施され、建物の耐用年数を大きく延ばすことができました。また、風化して崩れていた屋根の白灰製の天溝は、現代の工法を取り入れてステンレス材で再構築され、排水機能が大幅に向上しています。

建築物の損傷程度を再評価するだけでなく、修復チームは工事の過程で多くの驚くべき発見をしました。

屋根の棟木のトタンが取り外されなければ、その中に覆われていた装飾物が日の目を見ることはありませんでした。精巧な透かし花タイルやレリーフ模様には、先人たちが家族の繁栄を願った思いが込められているだけでなく、建築当時に流行していた装飾様式も映し出されています。これら貴重な意匠を保護するため、修復チームは3Dスキャン技術を用いて建築の細部をデジタル化し、そのデータをもとに屋根棟の再構築を行いました。もともと脆弱だった構造部分は評価のされた上、取り外され、展示品として保存され、竣工展では来場者が間近でその精緻なディテールを鑑賞できるようになっています。

フィルムに刻まれた光で、建築の姿をよみがえらせる

鹿港は夏に雨が多く、冬には強い風が吹くため、独特の「不見天街(ふけんてんがい)」という街並みが形成されました。街道の両側に並ぶ商家が、互いに軒を連ねて「街路亭」と呼ばれる長い屋根付き通路が作られ、煉瓦の床が敷かれ、歩行や集いの場として人々に利用されていたのです。「不見天街」は1934年の市区改正の際にすでに取り壊されてしまいましたが、当時の住民が屋上から撮影した古い写真が残されており、それらは現在、建物調査における貴重な参考資料となっています。

修復チームは、許家の祖母・施秀香さんの聞き取り記録を手がかりに、長源医院の一番手前の棟のファサード、第二・第三棟の通路部分、そして後方の屋根勾配上に、老朽化して損傷した煉瓦舗装をいくつも確認しました。古写真や歴史資料と照らし合わせた結果、それらがかつての「街路亭」の延長構造であったと推定され、修復工事では地面の煉瓦を再敷設し、さらに通路部分に残っていた古い煙突も修復されました。

歴史写真を通して見ることで、長源医院のかつての建築デザインだけでなく、当時の鹿港の人々の暮らしぶりまでも垣間見ることができます——そして、古建築の再生もまた、その延長線上にあるのです。「異なる時代に築かれた建築空間が、老朽化を理由に取り壊されることなく残されるとき、歴史は自然と日常生活の中に溶け込み、やがて都市の風景の一部となっていく」まさに、雄本老屋の総顧問・謝佩娟(シェ・ペイジュエン)氏が長源医院について述べたように──かつて失われた記憶や建築の構造は、地域文化を形づくる大切な断片であり、それらを再び見出すたびに、現代の暮らしとの新たなつながりが生まれていくのです。

長源医院の閩式街屋の第二・第三棟の通路部分は、かつてトタンで覆われていた。
修復工事の後、屋根には再び瓦と煉瓦が敷き詰められ、古い煙突も元の姿を取り戻した。

Further Reading

2025 / 09 / 24
2案件で3つの賞!雄本チームの作品:雄本老屋「長源医院-鹿港歴史影像館」、緯豊営造「屏東・西市場」が共に2025建築園冶賞を受賞
2025 / 08 / 11
曲巷冬晴-彰化県古家活性化プロジェクト
2025 / 06 / 26
長源医院-鹿港歴史影像館が2025建築園冶賞「旧建築物再生」と「人文美学」のダブル受賞の栄誉に
2025 / 06 / 09
源起新生:6/7 ꜱᴀᴛ. 長源医院-鹿港歴史影像館オープニングティーパーティー報告
2025 / 06 / 03
百年診療所が現代の日常を照らす!長源医院-鹿港歴史影像館は、空間体験、和洋茶席、テーマ展示、そして古家リノベーションのノウハウ提供を通じて、古都・鹿港(ルーガン)に新たな芸術と文化の活力を吹き込んでいます。
2025 / 05 / 23
フレームの外側:許蒼澤家族映画再上映会
2025 / 04 / 16
港・島嶼の文化的翻訳を古都の産業へと繋ぐ:
北埔集落の再生における多様な可能性を見る
Back to MENU