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一冊の本の厚みで綴る、島の再生の軌跡――9月24日(水)『老屋熟成』新刊発売

2025 / 09 / 24

2023年、雄本チームは、台北老屋新生20周年特集『熟成台北』(2020)の再版・改訂の可能性を探していました。繰り返しの議論の過程で、私たちは書籍に掲載された多くの事例が段階的な役割を終え、人・事・時・場所がすでに変化していることに気づきました。また、チームの役割も変化し、古家新生の観察者・参加者から、自ら参与する実行者へと変化していました。私たちが傍観者として記録するだけでなく、修復現場のさまざまな課題に自らが向き合うようになると、古家を見る視点も自然と変わっていきました。

実践者の視点から出発するという一つの考えが静かに芽生えました。再版するよりも、全く新しい本を自分たちで書いてみてはどうだろうか?最前線の修復経験に根ざし、そこから実行可能なモデルを整理した作品集を生み出してみては?当時の私たちは、このような単純な出発点が、その後2年にわたる執筆の旅を始動させることになるとは予想だにしていませんでした。

作品集から「実践ガイド」へ

本書の企画当初は、雄本の視点を中心に据え、一般の人々が抱く古家への誤解や、現代のトレンドへの応答、さらには専門家や研究者の経験談などを交えて語る構成を想定していました。しかし、各地の再生事例を一つ一つ検討し、原点出版の葛雅茜編集長のご指摘のお蔭で、真に現場に立ち返る「ガイド」は、台湾という島の各地域での実践の軌跡から自然に生まれてくるものだと気づきました。

当初は複雑だった概念論は背景となり、私たちは、異なる時代、タイプ、活性化モデルに跨る32軒の実例(もちろん、その中には雄本が直接関わった作品も多く含まれています)にスポットライトを当て、複雑な意思決定過程、リソース連携、そして煉瓦や瓦の背後に隠された「人」に関するさまざまな考慮と思索を改めて分析しました。数十時間にわたるインタビューから、家主たちの初志と葛藤を知りました。そして、地域文献、学術書、歴史的地図を繰り返し比較検討し、一つ一つの煉瓦や瓦の真の文脈を復元することに取り組みました。

写真1/各事例に合わせてインタビューガイドラインを作成し、様々な決断の背後にある思考プロセスを深く探求。写真は青田七六での水瓶子先生、楊晴茗先生とのインタビュー風景。
写真2/『老屋熟成』著者チームが現地調査を行い、歴史的空間が現代都市とどのように融合しているかを体感。写真は榕錦時光生活園区。
写真3/白米甕砲台でのインタビュー開始前、鶏籠卡米諾の創設者である単彦博氏(左端)による園区案内風景。
写真4/本書編集顧問・呉宜晏先生(左から2番目)のサポートと助言に感謝します。多くの古家再生現場へ同行されました。写真は国立歴史博物館でのインタビュー撮影風景で、林聖峰先生が対応。

本書の執筆にあたり、雄本チームは台湾各地の古家再生の現場を訪ね歩きました。たとえば和合青田では、館長の張芳庭(チャン・ファンティン)氏が自ら庭の草木を手入れし、前の家主との絆を大切にしながら、旧日本式宿舎の静けさを茶文化ブランドのやわらかな精神へと昇華させていました。大渓源古本舗のオーナー・古正君(グー・ジェンジュン)氏は、長く困難な補助金申請と修復の過程を、不屈の精神と豊かな発想力で乗り越え、祖先の家の姿を残しながら“侘び寂び”の美を体現していました。また、小轉角 ArtDe Cornerでは、建築家の黄介二(ホアン・ジェアアー)氏と鍾心怡(チョン・シンイー)氏、そして李宜蓁(リー・イージェン)氏が率いるチームが、ビジネスモデルの試行錯誤を経て、最終的に街と共に息づく空間としての道を見いだしていました。

まさにこれらの現場の重みと細部が、チームに自身の経験と照らし合わせる機会を与え、最終的に『老屋熟成』の第2章までの概念的な展開と、最後の実用的な付録Q&Aへと実を結びました。本書が、古家再生の点在する経験を整理し、実践の指針となる道筋を描き出す一冊となることを願っています。さらに、これをきっかけに広く対話が生まれ、社会全体が「壊すか・壊さないか」という二者択一の議論を超えて、“終わりを見据えて再び生かす”という、新しい再利用の戦略を探る視点へと歩み出すことを期待しています。

写真1/『老屋熟成』著者チームと和合青田の張芳庭館長(左端)との記念写真。(画像提供/和合青田)
写真2/小転角 ArtDe Corner インタビュー現場。黄介二氏(右一)、鍾心怡(右二)建築士と李宜蓁ディレクター。

多くの人々の力によって生まれた作品

古家を修復して元の良さを取り戻すには、多くのパートナーが心血を注ぐ必要があります。1冊の本の出版も同様です『老屋熟成』はまさに多くの人々の力によって生まれた作品です。

▌舞台裏チーム

本書の完成にあたり、まずチームを全面的に信頼し、2年にわたる取材と執筆の旅を支えてくださった総企画の黄柏堯(ホアン・ボーヤオ)氏に心より感謝申し上げます。共同著者である蕭定雄(シャオ・ディンション)、黄令名(ホアン・リンミン)、鍾佳陵(チョン・ジャーリン)、呉欣融(ウー・シンロン)の各氏は、台湾各地を奔走して得た体験と知見を言葉へと結晶させてくれました。編集顧問の呉宜晏(ウー・イーイェン)氏は、長期にわたり本書の構成・方針の策定に携わるとともに、「基隆太平国小旧校舎」の章を自ら執筆してくださいました。また、附録部分では蕭涵文(シャオ・ハンウェン)氏が多くの有益な助言を寄せ、廖翊婷(リャオ・イーティン)氏はこれまでの編集経験を惜しみなく共有してくれました。写真家の朱逸文(チュー・イーウェン)、許震唐(シュー・ジェンタン)、張銘智(チャン・ミンジー)、林奕安(リン・イーアン)各氏には、それぞれのレンズを通して老屋の息づかいを生き生きと記録していただきました。そして、原点出版のチームには、初期段階での構成設計から、校正・印刷チェックに至るまで細部にわたるご尽力をいただき、この本を無事に読者の手元へ届けることができました。

『老屋熟成』サンプル確認作業の様子。

▌SpecialThanks

『老屋熟成』の魂は、本書に収録された32軒の再生された古家にあります。すべての家主、修復者、経営チームの共有に感謝します。皆さんのお蔭で、私たちはより多角的な視点から、現代社会における古家再生の価値と意義を解釈することができました。

❏ 文化空間|白米甕砲台、大渓源古本舗、小転角 ArtDe Corner、国立歴史博物館、太平買菸場、台湾鳳梨工場

❏ 商業空間|貝殻好室、曲巷冬晴 Suki na B&B、青田七六、和合青田、新埔潘錦河故居、或者新州屋、埔里能高俱楽部、林百貨、基隆太平小学校旧校舎、第四信用合作社、棧貳庫 KW2、驛前大和頓物所

❏ 教育空間|南郭郡守官舎、新化惠生病院、実践大学民生学院教学棟・学務棟

❏ 住宅空間|後壁黄家古民家、台北自転車 Space Station、高雄小本宿舎

❏ 複合空間|長源医院-鹿港歴史影像館、榕錦時光生活園区、虎尾建国眷村、嘉義旧監獄・宿舎群、継光工務所、苗栗出磺坑、三和瓦窯、旗津技工舎

最後に、張聖琳先生と榮芳杰先生が本書のために序文を執筆し、学術的視点を本書にもたらしてくださったことに心から感謝します。また、水瓶子氏、呂耀中氏、林曉薇氏、凌宗魁氏、黄俊銘氏、黄筠舒氏、黄金樺氏、謝佩娟氏、鍾心怡氏、蘇明修氏、蘇瑛敏氏、吳宜晏氏など、各専門分野の先輩方も惜しみない支援を提供くださいました。

2025年9月24日、『老屋熟成』が出版されます。私たちが2年の歳月をかけて積み重ねてきた成果を、台湾の古家の未来を考えるすべての方々に心を込めて捧げます。また、すべての同志とともに、古家と現代社会の共存・共栄の道を探し続けます。

『老屋熟成』購入情報

❏ 出版スケジュール|9/24 ᴡᴇᴅ. 台湾全土の書店で正式発売
❏ オンラインチャネル|博客来誠品読冊金石堂
❏ 書籍定価|NT$ 660

新書発表シリーズイベント

❏ 10/4 ꜱᴀᴛ. 台中会場|私も古家を経営できる?古家の商業的潜在力と経営の道
❏ 10/18 ꜱᴀᴛ. 高雄会場|温かみのある良い家と物語、古家の代表的な成熟事例マップ大公開
❏ 11/1 ꜱᴀᴛ. 台北会場|活性化から修復へ、「老屋再生」ガイドの構築

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