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光と影で島の座標を記す:
4/18 ꜰʀɪ.『台湾写真家』シリーズ叢書発表会報告

2025 / 04 / 21

「父はカメラで日記を書くような人でした。父は写真とは生活そのものであり、レンズが捉えるのは人々の日常の息吹だと強調していました」写真家・許蒼澤氏の息子である許正園医師が、新刊発表会で父に代わって挨拶に立ち、父と同じ穏やかで温かみのある語り口で、その創作の核心を語り伝えました。鹿港の街の様々な姿に対するこの深い眼差しは、現在、国立台湾美術館と国家撮影文化センターが企画出版した『台湾写真家』シリーズ第8集『許蒼澤』により、より包括的かつ体系的に一般の人々の目に触れるようになりました。

2016年から出版の企画が始まった『台湾写真家』シリーズは、台湾の写真家の創作の生涯を記録するだけでなく、時代の姿を映し出すこれらの画像による物語を通じて、台湾写真史の複雑で多様な発展の文脈を段階的に構築し、補完し、さらには再解釈しています。この新書発表会には多方面からの力が結集し、写真家とその家族、専門書の編集学者、関連機関の代表者だけでなく、長年鹿港の文化歴史研究に取り組んできた陳仕賢先生も重要なゲストとして招かれました。写真家・許蒼澤氏の故居である「長源医院-鹿港歴史影像館」の修復を手がけた雄本老屋は、今回このプロジェクトに招かれたことを大変光栄に感じています。文化機関、専門家、そしてご家族の皆さんが分野を越えて協働し、許蒼澤氏の写真作品を繊細で豊かな「読書体験」へと昇華させていく過程を、私たちは間近で見届けることができました。

長源医院名誉館長の許正園医師が『台湾写真家』新書発表会でスピーチ。(画像提供/台湾文化部(日本の文化庁に相当))
『台湾写真家』第八輯は『許蒼澤』、『蔡明德』、『章光和』の3冊の専門書を含み、スタイルと時代の異なる3人の写真家がこの土地に残した作品を記録。(画像提供/台湾文化部(日本の文化庁に相当))

時代の光と影の中の地方ドキュメンタリー

台湾の写真史の発展を概観すると、日本統治時代に導入された「画境写真(ピクトリアリズム)」、「ストレート・フォトグラフィー」、そして「フォトジャーナリズム」など、当時の世界的な潮流を反映した表現様式から、戦後の社会情勢や政権交代の影響を受けて、島・台湾の写真スタイルはわずか数十年のあいだに幾度もの変遷を遂げてきたことがわかります。許蒼澤氏が数多くの作品を発表した1960年代当時、戒厳下の台湾社会では芸術文化の風潮が比較的保守的であり、画面の美しさや情緒的な構図を重視する「サロン写真」が主流となっていました。それはまた、創作者たちが個人的な感情や内面を託すための表現空間ともなっていたのです。

当時流行していた唯美的なサロン写真とは異なり、許蒼澤氏はレンズを氏が深く愛する土地と生活そのものに向けることを選びました。故郷の鹿港の伝統的な風景や地元の農村の素朴な景色が時代の変遷とともに徐々に消えていくことに心を痛め、写真フィルムを島の風景を保存する道具として、古都の路地、伝統的な農村、市場や埠頭など人々が労働し集まる場所を歩き回り、土地に寄り添う視点から、ごく普通の生活の断片をありのままに記録しました。氏の作品は緻密に計算された完璧な構図を追求するのではなく、日常生活の中にある何気ない、生命力に満ちた輝きを保存することに努めています。これらの画像は一見複雑で無秩序に見えますが、控えめな温かさで深さと広さを兼ね備えた地方の視覚アーカイブを残しています。

台湾撮影文化資産協会の張美陵理事長が編集・執筆した『許蒼澤』では、デジタル化された11万7千点以上の画像作品を「公共空間の公衆生活」、「働く子どもたち」、「地方労働者」、「赤煉瓦古民家の路地」、「鹿港の古民家の赤い瓦屋根」という5つのテーマに分け、画像の研究と解釈を通じて、許蒼澤氏の創作思考を整理しようと試みています。そのために、張美陵理事長は許正園医師に何度もインタビューを行い、精力的にその中に秘められた物語を掘り起こしました。また、繰り返し振り返り語る過程で、許医師は父親の作品についてより深い理解とつながりを持つことができました。

映像から場所の活性化へ

質問:「当時、許氏に、なぜこんなにたくさんの写真を撮ったのか、聞いたことありますか?」
許施秀香さん(写真家・許蒼澤夫人):「彼は何も言いませんでした。ただこう言い残しました。『いずれ分かるよ』」
——『許蒼澤』専門書の本文より抜粋

許家の家族の記憶によると、このリアリズム写真家は言葉よりも画像で語ることを得意としており、その記憶の中の対話は時空を超えた予言となり、数十年後の今、その言葉が現実となりました。古家や街並みが時代の流れの中で解体・再構成され、かつての生活様式も再現が難しくなる中、写真家・許蒼澤氏が残した写真は代替不可能な歴史的証言となり、この島の過去の物語を語り継いでいます。

まさにこのような理念への深い理解から、許家は2008年に「文化的公共財」という考え方を実践に移し、許蒼澤氏が遺した写真資料のすべてを、国立自然科学博物館に寄贈しました。貴重な記録が適切に保存・研究される環境が整っただけでなく、写真集『台湾写真家:許蒼澤』のような書籍の誕生にもつながりました。雄本老屋にとって、許医師が分類・整理した歴史的画像は、長源医院の修復工事において芸術鑑賞や学術研究を超える価値を発揮しました。写真家・許蒼澤氏のレンズを通して、私たちはこの百年の古家の初期の姿、家具の配置、さらには周辺の街区や生活風景を垣間見ることができ、歴史文献だけでは完全に捉えきれない細部や雰囲気を見ることができました。これにより、人々の記憶の中の温かい姿にできる限り復元することができたのです。

許蒼澤氏は生涯をかけて鹿港のための最も情感豊かな画像日記を書き記し、この土地への思いは今も『台湾写真家:許蒼澤』の中に深く刻まれています。本書では、これまであまり公開されていなかった一連の画像作品を厳選し、張美陵理事長と専門家・学者の研究と解釈を通じて、許蒼澤氏の創作の文脈を読者の前に提示しています。より多くの人々がこのリアリズム写真家の光と影の世界に足を踏み入れ、古都・鹿港と島・台湾とのつながりを取り戻すことを期待しています。

許家の家族が『台湾写真家』シリーズ叢書の新刊発表会後に撮影した集合写真。(画像提供/陳仕賢先生)


書籍情報

【台湾写真家:許蒼澤】-GPI 政府出版品情報サイト

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