都市は集団生活の具体的な表現であり、新旧建築物が交わり共生することで時代の文脈やそこに宿る多様な価値が映し出され、革新的なアイデアを実践する場が提供されます。そのため、大規模な再開発だけでなく、日常の微視的な文脈に立ち返り、家のあり方と都市の未来を再考する必要があります。最近、内政部国土管理署が発表した「古家延命機能再生プロジェクト」は、「緩やかな再開発」への試みであり、古いアパートや一戸建て住宅の修繕整備に補助金と専門的なコンサルティングサービスを提供して、住民自らが主体的に変化を起こし、既存の文脈が尊重されつつゆっくりと改修が進むようになることを目指しています。

生活から出発し、都市の記憶を継承する
台湾の人々の古家への関心は、初期の文化資産の修復と保存から、徐々に一般の人々の生活空間へと拡がっています。過去に台湾文化部(日本の文化庁に相当)が推進した「私有歴史建築保存再生プロジェクト」や、台北市の「住宅改修スピードパッケージABC」、嘉義市の「嘉有木屋」、「古家化粧落としプロジェクト」といった地方政府の取り組みは、この概念の変化を反映しています。古家延命プロジェクトの推進は、この高まりつつある潮流の重要な一歩と見なせるものです。文化的価値を持つ古い建築物から台湾全土の一般住宅へと政策資源を拡大し、最も基本的な構造の安全性と機能の老朽化問題に直接向き合うものとなっています。
それにもかかわらず、従来の改修モデルは坪効率と利益の定量的指標にフォーカスされることが往々にしてあり、長期にわたる意見統合プロセスからもコミュニティのコンセンサス形成の難しさが見て取れます。もし私たちが視野を広げ、ライフスタイルと地域の文脈を兼ね備えた都市の姿を見ることができれば、「再開発」の方向性により多様な価値と可能性を注入できるかもしれません。
政策によって住居の基盤が提供されても、古家が「より良い生活」のための選択肢となるには、官民の協働による検討が求められます。雄本チームが最近出版した新書『老屋熟成』もこの点について議論を展開しています。書籍に収録された島嶼の各地における古家再生事例は、民間の自主的な創意による運営であれ、公共部門と地域コミュニティの協力による共創であれ、いずれもその空間を現代の生活や革新的なモデルの器に変換することを試みるものです。
「台北単車 Space Station」を例にとると、かつては暗く細長い集合住宅だった空間が、デザイナーの巧みな改装によってマウンテンバイクの趣味を融合した明るい住まいに変わり、テラゾー仕上げの床と古いウォールランプが丁寧に保存され、現代的な機能性とスマートな収納設計が調和のうちに共存しています。古いアパートは住人の居住空間であると同時に、同好の士が集まる社交の場としても柔軟にアレンジでき、都心で生活の質と自分らしいスタイルを保ちたいという現代の若者の願望にしっかり応えています。


港町・高雄に位置する「小本宿舍」シリーズは、視野を社会レベルのイノベーションへと広げています。都市に多く存在する空き低層アパートやそれに付随する住居問題に向き合い、小本生活建設チームは民間企業の力で古いアパートを購入・修復し、独身女性やペットの猫と暮らす人などの特定顧客層向けに、快適で質の高いコンセプト賃貸環境を創出しています。その核心は「先に賃貸、後に購入」という居住プランにあり、賃借人は家賃の半分を将来の住宅購入の頭金として充当することを選択できるようになっています。「小本宿舍」は家賃回収と革新的なプランを通じて、複製可能な経済モデルを模索し、古い建築物に活力を注入すると同時に、住居問題に対する持続可能な解決策を提案しています。
日常を安心して過ごせる場所を求めて
企画者のマクロな視点から始まり、無数の安定した美しい日常に終着する「古家延命」は、大規模な再開発以外の実際的な方法を通じて、人と都市の対話を再び開くことを目指しています。『老屋熟成』に収録された事例とそこに秘められた創造的思考を振り返ると、このプロジェクトの意義は単なる補助政策にとどまらず、都市と農村の多様性を生み出す触媒でもあることがわかります。政策の推進力と都市住民が共に描く未来のイメージが重なり合うとき、都市再生の概念も継続的に熟成され、台湾の島嶼の各地域にかけがえのない特色を取り戻すことができるはずです。